David C. Pollock Scholarsとの顔合わせ
5人のScholars (奨学生)の紹介
こちらで紹介したように、Families in Global Transition (FIGT) の奨学生に選ばれたのは私を含めて5人でした。それぞれの紹介(英語)はこちらのリンクで読むことができますが、簡単に日本語でもそれぞれについて紹介します。(以下は2018年3月時点の情報です。)
Uwe:中国で生まれ育ち、現地のアメリカンスクールで教育を受けたドイツ人。現在はアメリカ人の奥さんと子供達と台湾に在住。台湾のインターナショナルスクールの校長先生を勤めたのち、自分の娘が発達障害を持って産まれてきたのをきっかけにインターナショナルスクールの特別支援教育をサポートするNPOを運営している。
Jeniece:アフリカ系アメリカ人の応用社会学者。アフリカ系アメリカ人として常に自分のアイデンティティを疑問視し、自国アメリカで常に疎外感を感じながら育つ。学位取得後は日本の大学で教鞭を執るが日本への適応を難しく感じ、現在はUAE(アラブ首長国連邦)にある大学の助教授。
Jeanne:中国在住のアメリカ人。7人の子供がそれぞれ異なる国で産まれ、子供達が話せる言語も異なるので英語が家族の共通語。現在は中国でアートを通じて子供達のアイデンティティやトラウマを表現するためのワークショップを運営している。
Zainab:アフガニスタン国籍のイラン難民。難民としてイランで幼少期と学生時代を過ごすが、家族を含めてアフガニスタンとイランの国境を行き来しながら育つ。現在は英国のチェスター大学の博士課程に在籍し、アフガニスタン難民の女性達について研究をしている。3年前にもこの奨学生に選ばれたがビザが下りず、今回は英国の学生ビザがあるため念願の参加だったそう。
そして最後に、FIGTの理事でもあり私たち奨学生のコーディネーターでもあるJody。Jodyはイギリス人とカナダ人のミックスで、カナダの大学に入学するまではイラン、フランス、シンガポールの学校に通い、大学卒業後は日本の企業に勤務。日本で出会ったアメリカ人の旦那さんと共に、現在はバージニア州に在住。
「簡単に」紹介してもこれだけの量を書かないと紹介しきれないような、多様なバックグラウンドの人達の集まりです。それぞれ年代も30代から70代と幅広く、性別も国籍も日常的に使う言語も全員異なるので5人の共通項なんてないだろうと思っていました。
だからこそ、最初のスカイプの「顔合わせ」で全員と話した後の不思議な感覚は数日間引きずるほどでした。
不思議な感覚を紐解くと・・・
まず顕著だったのが、全員自己紹介が長くて複雑ということでした。おそらく私の自己紹介が一番シンプルで分かりやすかった気がします。
そこまで全員が複雑なバックグラウンドを持っていると共感するところがなさそうですが、複雑だからこそ何かしら重なる点が数々ありました。例えばイランで育ったZainabに対してJodyが「イランのどの辺り?いつ頃?」と聞いて地元トークが始まったり、日本人の私にJenieceとJodyが日本語で話しかけてきたり、(ちょうど台湾に旅行する直前だったため)私がUweに台湾のオススメを聞いたり。ごくごく自然に、このような会話が繰り広げられる感覚がとても新鮮に感じられました。
この新鮮かつ不思議な感覚はどこから来ていたのかと考えると、大人になってから初めて会う人に「子供の頃アメリカに住んでいた」とか「アメリカにいた時は・・・」と口にすると(かなり不本意ながら)自慢に捉えられたり、「おぉ~!」と感嘆の声を上げられたり、「じゃあ英語ペラペラなの?」と聞かれたり、「私はもっと苦労した」といきなり海外での苦労話をされたり、突然外人扱いされたりすることに慣れていたからなんだろうと思います。
中でも一番不思議な感覚に陥ったのが、Jodyを含めた全員が外見からは想像のつかないアイデンティティやパーソナリティを持っているということでした。例えばUweは見た目は白人男性、話し方も(アメリカンスクール育ちのため)アメリカ人のよう。しかも打ち合わせ時はちょうどミネソタの奥さんの実家のキッチンにいて、大きくMINNESOTAと書いてあるパーカーを着ていました。そんな一般的なアメリカ中西部の白人男性にしか見えないUweが、自分の中国での幼少期の体験や台湾の自分の家の描写をし始めると、話の内容と外見がミスマッチに見えて、とても不思議に思えました。よく考えると、自分もそういう風に見えるのか・・・とも思いましたが、自分の中に内在する固定観念がどんどん崩されていくような感覚でした。
このスカイプミーティングの最後に、Zainabが放った一言が心に残りました。 “We are so different but at the same time we have so much in common.”
まさにその通りでした。おそらくその共通項というのが、全員「見た目と中身がミスマッチ」という点だったのかもしれません。のちにカンファレンスで ”Our differences are our commonalities(違うということが私たちの共通点)”という言葉が、この時の不思議な感覚とリンクし妙に腑に落ちました。
そしていよいよ、FIGTのカンファレンスです!
ここでの体験についてはコチラをどうぞ。