FIGT 2018 Conference @ Den Haag
2018年3月、オランダのハーグで開かれたFamilies In Global Transition (FIGT)のカンファレンスに参加してから、ちょうど1年が経ってしまいました。
このカンファレンスでの体験を記述するまでに1年も掛かってしまいましたが、ここでの体験が私にとって大きすぎる出来事だったので、最近やっと消化できるようになりました。
あの衝撃的な3日間を一言で表わすと、「乾いていたカサブタをベリッと剥がされた」感覚でした。と言ってもあまり伝わらないと思うので、もう少し分かりやすく説明します。
まず会場であるNH Den Haagに到着し、開会式でDavid C. Pollock Scholarsとして挨拶を参加者全員の前でしました。見渡した感じでは欧米系(白人)が多いという印象で、見た目が完全にアジア系な私は少しアウェーな感じがしました
しかしプログラムが進み、様々な参加者と話し始めると、David C. Pollock ScholarsのSkype上の顔合わせ(詳しくはコチラ)で感じた、「見た目と中身がミスマッチ」な人がほとんどであることがよく分かりました。
特に私は参加者全員の前で挨拶する機会にも恵まれていたので、会場を歩いているだけで色々な方が声をかけてくれます。中でも、白い肌に金髪で青い目の女性が流暢な日本語で「日本のどちらからいらしたんですか?私は石垣育ちなんですよ、今はロシアに住んでるけど。」と話し掛けてきた時は、驚いて一瞬固まってしまいました。
世界のあらゆる地域から、このような「見た目と中身がミスマッチ」なTCKが参加しているため、変に周りに合わせたり、「日本人らしく」したり、気にしなくて良いのがこんなにラクなのか!というのが最初の感覚でした。しかしプログラムに参加するうちに、もっと深い部分で自分の感覚が揺さぶられました。
私は主にTCKの学術的な研究に興味があったため、様々な研究発表に参加しました。(FIGT全体としては、もっと気軽に参加できる井戸端会議のようなプログラムや、ビジネスのプレゼンの場など、幅広くプログラムがありました。)今までに研究発表には参加したり、自分自身が発表したりしてきましたが、自分でもビックリするくらいに研究内容に共感しすぎてしまい、毎回気づくと涙ぐんでいる自分がいました。どのような発表内容があったのかはまた後日アップしたいと思います。
普通、研究発表を聞いて涙を流すことなんてあり得ない(と思っていた)ので、そんな自分が頭がおかしくなったのか情緒不安定なのか、恥ずかしくなっていたところ、更に衝撃的だったのが、周りの誰しもが泣いている私に理解を示してくれたのです。しかも、研究発表者だけでなく、一緒に発表を聴いていた人、さらには廊下ですれ違う人、トイレで遭遇した人・・・どんな人も、涙を浮かべている私に”I know.”とか”I understand.” と声をかけてくれたり、ただ優しく微笑んでくれたりします。
こうやって文字にしてみても、何かのカルトのように大分怪しい集団のように思えます。しかしそれくらいに、参加者がTCKに共通するような体験をしてきたからこそ、共感するレベルが本当に深いのだと感じました。そして私の「カサブタがベリッと剥がれた」のは、恐らくこの共感力の非常に高い人たちに囲まれたからだと思います。
David C. Pollock Scholarsの一人でもあったZanib、韓国のTCKであるIsabelle、台湾のTCKのJane、Scholarsの取りまとめをしてくれたJody・・・たった3日間しか一緒に過ごしていないのに、そして年齢も住んでいる国も、今まで住んだ場所もバラバラなのに、なぜこんなにも語り合えるのだろうと不思議でたまりませんでした。
しかも彼女達と話しているうちに、今まで自分でも認識できていなかった、私自身の中に閉じ込めていたダークマターが一気に溢れ出したような感覚になり、初めて自分自身が抱えているトラウマのような、暗くて重い何かに気づいたのです。
それまで、比較的ポジティブに明るく生きていたつもりだったので、自分の中にそのような重い気持ちが存在していることに少し戸惑いましたが、長年なんとなく感じていた「モヤモヤ」が少し形を見せた気もしました。やはり、自分の中にずっと蓋をしてきた何かしらの想いがあるのだなぁ、とこの時はぼんやりと「感じる」ことしかできませんでした。
この「ダークマター(暗黒物質)」と呼ぶのにふさわしい、正体不明のモヤっとした何かについては、1年経った今、だいぶ解消されてきました。こちらのついても後日載せたいと思いますが、このdark matterの存在をはっきりと認識し始めたのはこのカンファレンスがきっかけだったように感じます。
カンファレンスの「乾いていたカサブタをベリッと剥がされた」からなのか、カンファレンス後に寄り道したアムステルダム、帰りの日本までの飛行機、そして帰国してからの数日間は久しぶりの高熱にうなされました。きっと精神的にだいぶ疲弊したのだろう、と今振り返って思います。
そんなFIGTの次のカンファレンスは2019年4月にタイのバンコクで開催されます。
初のアジア開催となるカンファレンス、2度目となる今回は高熱出さずに済むかな・・・! 怖いような、楽しみなような、少しドキドキしています。